ジブリで中国語を学ぼう!

ジブリ映画の中国語吹き替えを聴いて中国語を勉強しています。

「不必」の用法

中国語で「不必」という言葉があります。
「不必」は「〜する必要がない」
「〜しなくてよい」という意味の助動詞です。
「不要」「不用」と同じ様な意味で使いますが
ニュアンスは少し違うようです。

「不要」は「〜するな」という
禁止の意味でも使うので
使い方によってはきつい言い方に聞こえます。
「不用」はどちらかというと
柔らかい表現になります。

「必」は「必ず〜する必要がある」
という意味の副詞で
「不必」はその否定になるので
「必ず〜する必要はない」
というニュアンスになります。

語気の強さとしては
「不要」>「不必」>「不用」
という感じになるようです。


風の谷のナウシカ」の中で
「不必」はどのように使われていたでしょうか。

まずはトルメキア兵のセリフです。
ペジテの船に乗せられたナウシカ
王蟲に襲われることを谷へ知らせようと
船から脱出しようとした時に
トルメキア兵に船に乗り込まれてしまいます。
その時のセリフです。

船到手了
chuán dào shǒu le
船はもらう

不必留俘虏
bú bì liú fú lǔ 
捕虜をつくるな

杀光他们
shā guāng tā men 
根切りにしろ

なんだか物騒なセリフですね。
「不必」の文より「根切り」の方に目が行っちゃいますが・・・

「俘虏」は「捕虜」
「留」は「とどめる」「残す」という意味です。
「不必留俘虏」で「捕虜を残す必要はない」
となります。

この部分の字幕はこうなっています。

船我们要定了
chuán wǒ men yào dìng le

不用俘虏
bú yòng fú lǔ 

赶尽杀绝
gǎn jìn shā jué 

字幕では「不必」は使われずに
「不用」が使われています。
「俘虏」は「捕虜」という意味の名詞のほか
「捕虜にする」という動詞としても使えるので
ここでは動詞として用いて
「捕虜にする必要はない」となります。

でも、見方を変えると
ここでの「不用」を助動詞としてではなく
動詞の「用」を否定している形だと捉えて
「捕虜はいらない」というふうに解釈もできるかな??と思いました。

「不用(助動詞)」+「俘虏(動詞)」
または
「不(否定)」+「用(動詞)」+「俘虏(名詞)」
どっちなんでしょうか・・・(汗)
どちらにしても意味に大きな違いはなさそうですが。

「根切りにしろ」の部分ですが
「根切り」なんて言葉、
あまり聞いたことありませんが
「皆殺し」「根絶やし」という意味で使うようです。

吹き替えでは
「皆殺し」を「杀光」で表現しています。
「光」は結果補語で
「〜しつくす」という意味を表します。
字幕では
「赶尽杀绝」という言葉が使われています。
「赶尽杀绝」は成語で「皆殺しにする」
「徹底的にやっつける」という意味があります。


次はトルメキア軍と風の谷の人々の
戦いの場面です。

兵士:装甲兵、前进
   zhuāng jiǎ bīng   qián jìn 
   装甲兵前へ!

クロトワ:殿下请进
     diàn xià qǐng jìn 
     殿下は中へ

クシャナ不必了
     bú bì le
     ここでいい

このあとミトが乗ったガンシップがやってきて
王蟲の群れが向かってると知り
戦いどころではなくなるのですが。

クシャナの「ここでいい」のセリフ
「中へ」と言われて
「不必了」と答えているので
「その必要はない」「それには及ばない」
という意味で使われています。

この「ここでいい」の部分の字幕は
こうなっています。

这里就好
zhè li jiù hǎo

字幕では「不必」は使われていません。
字幕の方が「ここでいい」の日本語に
寄せているように思います。


ちなみに「不要」と「不用」は
どんなセリフで使われていたかというと
ナウシカの有名なセリフで使われています。

来,不要怕,不要害怕
lái   bú yào pà   bú yào hài pà 
ほら怖くない、怖くない

ナウシカとテトとの出会いの場面です。
この部分の字幕はこうです。

听话,不用怕,不用怕
tīng huà   bú yòng pà   bú yòng pà 

「不要怕」も「不用怕」も
どちらも「怖がる必要はない」という意味です。
ナウシカが優しく声かける場面で
語気が強い感じもしません。

実際のところは「不要」「不用」「不必」の
ニュアンスの違いは
前後の会話やその場の状況、
言葉使いなどによって
判断するほうがいいのかもしれません。



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