ジブリで中国語を学ぼう!

ジブリ映画の中国語吹き替えを聴いて中国語を勉強しています。

リンの「やってらんねぇよ」のセリフ

千と千尋」に出てくるリンは
けっこう口が悪いですよね。
少し乱暴な言い方をすることも多く
そういう言い回しとかって中国語では
どのように表現されているのかな?と
ちょっと気になります。


今回は、千尋が湯婆婆と契約を結んで
湯屋で働くことになり
ハクがリンに千尋を押し付ける場面で
リンが発するあまり丁寧ではないセリフを
ピンポイントでとりあげようと思います。

まずはこのセリフ。

え〜あたいに押しつけんのかよ

ポイントは「あたい」と
語尾の「かよ」ですね。

日本語は一人称である程度その人の雰囲気が
つかめるのがいいですよね。
「俺」「ボク」「わたし」「わたくし」
「あっし」「おいら」「うち」「吾輩」
「小生」「自分」「俺様」「ぼくちゃん」
まだまだ他にもいっぱいあります。
日本語ってすごいな〜と思います。

このセリフの中国語はこうなっています。

你要把她塞给我啊
nǐ yào bǎ tā sāi gěi wǒ a

中国語ではやはり一人称は「我」ですね。
「塞」は「押し込む」「塞ぐ」
などの意味の動詞です。
動詞の後の「给」は結果補語で
「把構文」と合わさって、
物が移動することをあらわしています。

ここでは移動するものは「她(千尋)」で
「你(ハク)」から「我(リン)」へと
向かっています。
ここでの「要」は助動詞で「〜したい」
「〜するつもり」などの意思を表しています。

直訳すると
「あなたは私に彼女を押しつけるつもりです」
という感じになります。
「塞」は「押し付ける」っていう意味があるのか定かではないのですが(辞書には無い)
「押し込む」「詰め込む」という意味から
そんなニュアンスを持つのかな?
と勝手に解釈(汗)

リンっぽい(丁寧でない)言い方を
表してるとすれば
語尾の「啊」ですかね。
「啊」は語気助詞で、
様々な感情のニュアンスを表す言葉です。
日本語では「ね」とか「よ」とか「なぁ」とか。

この「啊」がどのくらいのニュアンスを
伝えるのか分かりませんが
吹き替えでは、リン役の声優さんが
かなりリンっぽい雰囲気を作り上げていて
このセリフもいかにも文句を言ってるような
口調で言っているので
そのような雰囲気は十分に伝わってきます。

ちなみにこの部分の字幕はこうなっています。

你要把她塞给我吗?
nǐ yào bǎ tā sāi gěi wǒ ma

「啊」の部分が字幕では「吗」になっていて
「押し付けるつもりですか?」と
疑問形で表現しています。


次のセリフは同じ場面で
父役に「リンが適役だぞ」と言われた後です。

やってらんねぇよ

この捨てゼリフは使えそうですね。
誰かに向かって言うのはちょっとアレですが
ひとりでつぶやくくらいならいいのかも。

中国語吹き替えではこうなっています。

真是被你们打败了
zhēn shì bèi nǐ men dǎ bài le

「真是」は「本当に」「全くもう」
というように使います。
「打败」は「負ける」「打ち負かす」
という意味の動詞です。
「被」があり受け身の表現になっているので
「本当にあなた達に打ち負かされた」
というようなニュアンスになります。

なるほどー
「やってらんねぇよ」が
こういう風に翻訳されてるんですね。
ちょっと日本語と違ったニュアンスに感じますが。
「打ち負かされた!チクショー!」
って感じかもしれません。

この部分、字幕では違った表現になっています。

真是做不下去了
zhēn shì zuò bu xià qù le

「做」は「やる」という動詞です。
「下去」は方向補語で、
ここでは動作が継続することを表しています。
「做下去」で「やっていく」という
ニュアンスになります。
動詞と方向補語の間に「不」が入って
可能補語の否定形となり
「做不下去」で「やっていけない」となります。

「本当にやっていけない」という意味になり
字幕の方が日本語のセリフの
「やってらんねぇよ」に近いですね。


実際にセリフで使われている中国語が
丁寧な言い回しなのか、乱暴な言い回しなのか
それを判別するのって難しいですね。
明らかに汚い言葉を使っていれば分かりますが
そうでない場合は語気助詞や口調で
ある程度判断するしかないのでしょうか。

日本語のように
二人称で「貴様!」とか「てめぇ」とか、
そういう分かりやすさはないものの
語気助詞や使う単語などで
上級者やネイティブの方は
微妙なニュアンスも読み取ることが
できるのかもしれません。

とりあえす「千と千尋」では
中国語吹き替えの声優さん達の
演技力がすばらしいので
セリフの言い方でその役の人柄が
想像できます。

映画やドラマなどはセリフの言い回しや
映像で想像することができますが
文字だけの小説などでは
そのあたりを読み取るのは難しそうですね。