ジブリで中国語を学ぼう!

ジブリ映画の中国語吹き替えを聴いて中国語を勉強しています。

えんがちょ

千と千尋」で竜のハクが怪我をして
釜爺のところでのたうちまわる場面。
「ハクが死んじゃう!」と千尋が心配して
なかなか切迫したシーンですよね。
河の神様からもらった苦団子を
ハクに食べさせようと千尋は奮闘します。

なんとか団子を食べさせた後、
それまでのシリアスなシーンから一変して
急にコミカルなシーンになります。
そのやりとり、なんだか笑えて結構好きです。

釜爺:出来了,那家伙在那儿
   chū lái le  nà jiā huǒ zài nàr 
   出た!こいつだ!

千尋印章
   yìn zhāng
   ハンコ!

釜爺:逃走了!那边,那边,那边
   táo zǒu le nà biān nà biān nà biān
   
逃げた!あっち、あっち!

   破除噩运,小千,破除噩运
   pò chú è yùn xiǎo qiān pò chú è yùn
   
エンガチョ!千、エンガチョ!

千尋来了
   lái le
   
釜爺:我切
   wǒ qiē
   
切った!

こんなやりとりですね。
えんがちょ、とか、
日本特有の概念なんでしょうか。

昔、私が子どもだった頃は、
汚いものを触ったら「えんがちょ」と言って
人差し指と中指を交差したり、
カラスや霊柩車を見たときは右手と左手の
親指と人差し指をくっつけて菱形を作り
誰かに手刀で切ってもらったりしてました。
そうすることで
「なかったことにする」というシステムです。
これ、昭和の頃の話ですね(笑)

うちの子ども達(小中学生)にこの話したら
「何それ?何のために?」と言われました。
今の子たちはそういうの、ないみたいですね。

この千尋と釜爺のやりとりもまさにそれです。
千尋が指で輪っかを作って、
釜爺に切ってもらっています。
あのシーンは、日本人の昭和生まれ
じゃない若い世代の方たちが見ても
なんのこっちゃかわからなそうなのに、
外国の方たちが見たら、
「なんの儀式?」って驚くんじゃないでしょうか。

しかも、それまでおぞましい物をふんじゃって
身の毛もよだつ感じになってた千尋
釜爺に切ってもらった途端に
「これ湯婆婆のお姉さんのハンコなの」と、
何事もなかったかの様に話しはじめる様子が
なんかのコントを見てる様でおもしろいです。


「えんがちょ」の部分の中国語ですが
「破除噩运」と訳されています。
「えんがちょ」に相当する言葉はない様です。
「破除」は「除去する、排除する」の意味で
「噩运」は「運が悪くなること」を意味します。
そのふたつの言葉を合わせて
「悪運を除去する」という意味合いに
なっています。
なかなかいい感じで訳されていますね。

中国の方がこの場面を見て、
この不可解なやりとりを何か悪運を取り除く
おまじないみたいなことをしてるんだろうなー
って感じで理解してもらえるんじゃないかと期待したいです。

千尋の「来了」の部分は
日本語ではセリフがありません。
中国語ではあえて入れてますね。
このわけの分からないやりとりを
少しでも分かりやすくするために
入れたのかもしれません。
何かが「来た〜」って感じなんでしょうね。
その「来たもの」を
取り除いてくれっていう流れですかね。


ちなみにこの部分、字幕だとこうなっています。

快去霉气,小千,去霉
kuài qù méi qì   xiǎo qiān qù méi
エンガチョ!千、エンガチョ!

切断了
qiē duàn le
切った!

「霉」は「カビ」の意味ですが
「霉气」は「悪い運気」「穢れ」という
意味合いがある様です。
「去霉气」で「穢れを取り去る」のようなニュアンスになるのだと思います。


「えんがちょ」の言葉は
中国語以外の言語では
どの様に訳されているんでしょうね。
こういうその国独自の言葉を翻訳するのって
訳者の手腕が問われそうですね。