ジブリで中国語を学ぼう!

ジブリ映画の中国語吹き替えを聴いて中国語を勉強しています。

誤訳じゃなくて解釈の違い?

物語の中で、
日本語から中国語に翻訳される時に
違う様に訳される時があります。
言語的なことだったり、文化的な違いだったり
理由は様々だと思います。
時には誤訳もあるかもしれません。

千と千尋」のストーリー展開の中で
おそらくオリジナルの製作側が意図したものと
違う様に解釈して訳されたんじゃないかな?と
ちょっと気になる場面がありました。


千尋が大湯を掃除して
番台に札をもらいに行くちょうどその頃
湯婆婆は自分の部屋でひとりつぶやきます。

是什么,好像有什么来了
shì shén me   hǎo xiàng yǒu shén me lái le
なんだろうね、何か来たね

趁着雨势大
chèn zhe yǔ shì dà
雨にまぎれて

有不好的东西混进来了
yǒu bù hǎo de dōng xi hùn jìn lái le
ろくでもないものがまぎれこんだかな

この「ろくでもないもの」とは
千尋が「ここ開けときますね」と言って
招き入れたカオナシのことを指しますが
この時はまだその正体に気づいてません。

この後雨の中、
湯屋に向かうオクサレ様が映し出されるので
「ろくでもないもの」が
オクサレ様だとミスリードされます。
結果としては、
オクサレ様は河の神様だと判明し
「ろくでもないもの」ではなかったわけで
その後、カオナシが「紛れ込んだろくでもないもの」だったと判明するわけです。

そういう物語の流れになっていて
それははっきりと
言葉で説明されているわけではありませんが
物語を追っていくとそのように読み取れるのです。

それは、湯婆婆のこのセリフからも想像ができます。

 う〜ん、おかしいね
 クサレ神の気配なんかじゃなかったんだが

このセリフから、紛れ込んだ「何か」が
「もっと違うものだと湯婆婆は感じている」
ということが伺えます。

ところがこの部分。
中国語の吹き替えだとこうなっているんです。

奇怪了

qī guài le

这个时候腐烂神怎么会来呢
zhè e shí hou fǔ làn shén zěn me huì lái ne

直訳すると
「おかしいね、クサレ神は今この時に
どうして来るのだろうか」
という意味合いになります。

日本語の方を知らなければ、
特に違和感のあるセリフでは
ないかもしれませんが
日本語のセリフの意図を考えると
ここはけっこう重要なセリフなのになぁ、と
感じてしまいました。

ちなみにこの部分
字幕ではこのようになっています。

奇怪了
qí guài le

不太像腐烂神的样子
bú tài xiàng fǔ làn shén de yàng zi

「不太〜」は「あまり〜でない」
「像」は「まるで〜のようである」
「样子」は「様子、気配」
などの意味があるので、
このセリフを直訳すると
「あまりクサレ神の気配のようではない」
となります。

字幕の方は日本語のセリフに近いですよね。
こちらは日本語の意図を汲んでいるように思います。


たびたび出てくる話題ですが
吹き替えと字幕の担当は
それぞれ別の人がやってると思うので
解釈は違う部分もあるんだと思います。

この部分は微妙なニュアンスなので
そのまま訳しても分かりづらいかもしれないし
ちょっと変えても物語に大きな影響を
与えるセリフではないと判断して
あえて分かりやすいようなセリフに
変えたって可能性もあるかもしれませんよね。

真意は分かりませんが
こういう部分を見つけて
あれこれ勝手に想像するのも
けっこう楽しいです。