ジブリで中国語を学ぼう!

ジブリ映画の中国語吹き替えを聴いて中国語を勉強しています。

「ここで働かせて下さい」

千尋が湯婆婆に
「ここで働かせて下さい」とお願いする場面。
湯婆婆に魔法をかけられて
口が開かなくなっちゃって
なかなかインパクトのある場面ですよね。

この「ここで働かせて下さい」的なセリフ。
実は全部で7回も言ってるんです。

釜爺のところで2回。
湯婆婆のところで5回です。

ひとつひとつ表現が微妙に違います。
それぞれの言い回しと
それに対応する日本語のセリフを
紹介したいと思います。

① 你能不能让我在这里工作?
  nǐ néng bu néng ràng wǒ zài zhè li gōng zuò
  ここで働かせて下さい

② 求求你让我在这里工作
  qiú qiu nǐ ràng wǒ zài zhè li gōng zuò
  あの、ここで働かせて下さい

③ 请问我可以在这里工作吗?
  qǐng wèn wǒ kě yǐ zài zhè li gōng zuò ma 
  あの…ここで働かせて下さい

④ 求求你让我在这里工作
  qiú qiu nǐ ràng wǒ zài zhè li gōng zuò
  あ、ここで働かせて下さい

⑤ 我真的想在这里工作
  wǒ zhēn de xiǎng zài zhè li gōng zuò
  ここで働きたいんです

⑥ 我想要在这里工作
  wǒ xiǎng yào zài zhè li gōng zuò
  ここで働きたいんです

⑦ 请您让我在这里工作
  qǐng nín ràng wǒ zài zhè lǐ gōng zuò 
  働かせて下さい

①と②は釜爺に対してのセリフです。
③以降は湯婆婆に対してになります。

②と④は全く同じ文章ですが
それ以外はみんな違った表現になっています。

ざっとこんなところでしょうか。
①可能の疑問文と使役 
②懇願と使役 
③お伺いと許可の疑問文 
④懇願と使役 
⑤希望 
⑥希望  
⑦お願いと使役

これに対して
日本語のセリフを見てください。
⑤と⑥は「ここで働きたい」という
自分の気持ちを伝えていますが
それ以外は一貫して
「ここで働かせてください」なんですよね。

他要是拒绝的话你就求他
tā yào shi jù jué de huà nǐ jiù qiú tā
( 断られても粘るんだよ)

ハクにこう言い聞かされていましたから。
千尋、7回も頼み込んだというわけです。

日本語のセリフは表現が乏しい、
というわけでは決してないですよ。

世間知らずの小学生が少ないボキャブラリーで
不器用にもこの局面を乗り切ろうと必死です。
気の利いたセリフが言えなくて当然のこと。
バカの一つ覚えみたいに同じセリフを
繰り返しているのは意図的な演出だと思います。

そう考えると、
中国版の千尋の方が
言い方変えて言ってみたりして
日本版千尋よりも要領がいいのかも(笑)
まぁ、そこは置いといて。

注目すべきは③です。
湯婆婆と対面して最初に求職するセリフ。
あのインパクトのあるビジュアルに
完全にビビったのかもしれません。
ここ1番の丁寧な言い方です。

「请问」とまずはお伺いを立てています。
「ちょっとすいません・・」
「ちょっとお伺いしますが・・」
という腰の低い感じから始まり
「可以」と「吗」を使って
許可を求める質問形式になっています。
「ここで仕事をしてもいいですか?」
という控えめな表現です。
10才にしては上出来なのかもしれません(笑)

⑤と⑥だけは「ここで働きたいんです」という
自分の気持ちを伝える日本語のセリフですが
中国語でも「想要」「真的想」を使って
働きたい気持ちを忠実に表しています。
この二つも日本語では全く同じセリフですが
中国語では二通りの違った表現を使ってますね。

それ以外は「让」を使った使役になってます。
「仕事させて」と多少荒っぽいところに
「能不能」「 求求你」「请您」を使って
お願いするスタイルになっています。

あえて同じ繰り返しを避けるために
微妙に違った表現を使っているのでしょうか。
意味的には大きな違いはないと思うのですが
中国語を勉強する立場からしたら
例文がたくさんあるみたいでちょっと楽しいです。